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キッズゲルニカプロジェクト
<材料:障子紙,墨汁、水彩絵の具セット、クレヨン、紙粘土、のり、カネスチック>
対象は小学校2年生から中学3年生
これまでのワークショップは個々の世界に集中し、夢中になることで達成感を味わい、「楽しかった!」という時間を過ごしてもらう活動が主でした。
ハンドベルでは、ひとり一人が必要で皆で心を一つにして作り上げる喜びを感じて他者を認め合うことの大切さを知ってもらう活動でした。
造形の活動でも参加者からの「みんなで一つの作品を作ってみたい」というリクエストがあり、それこそワークショップならではの活動であるし、hontoのmanabiの目指すものに通じると思いました。何か楽しい活動はないかと考えていた時、5年生の授業でピカソのゲルニカの模写をやっていたこともあり、以前研修会で知った「キッズゲルニカプロジェクト」を思い出しました。時を同じくして、ロシアのウクライナ侵攻が始まり毎日悲惨なニュースが報道され始めました。子ども達もきっと心を痛めているだろうと思い、このプロジェクトをやろうと決めました。
まず、巨大な紙の作り方
一般に行われているこのプロジェクトでは野外にも展示できるよう、テントの生地のシートにアクリル絵の具で描くのですが、経済的な理由(テントシートは7~8万円)と、もっと手軽に取り組めるように今回は和紙に墨と水彩絵の具で描くことにしました。といってもゲルニカサイズの和紙を手に入れることは難しいです。それで障子紙(厚手)をつなげて手作りしました。今は障子1枚分×4の大きなサイズがロールになって売られています。それを4本(1本約700円)買い、大和糊でつなぎました。縁は丈夫になるように折り曲げて二重にしました。(和紙は少し降り曲がっても筋が付きにくいし、破れにくい、そしてもし破れてしまっても修復が容易にできます。その上持ち運びも軽くてとても良かったです。)
では、導入
まず、ピカソのゲルニカについて話します。ピカソがゲルニカを描いた時のスペインの様子、ゲルニカを描いた時のピカソの心象、そして、大きさは今みんなの前に置かれている大きさと同じなどを画集で絵を見せながら話します。そして、これからみんなで描くのは、戦争の悲惨な絵ではなく平和の絵であることを伝えます。アフターゲルニカ!【小学校2年生から中2までの子ども達がいるので、小さい子には悲惨な様子を伝えるときは十分配慮します】
次に、では平和って何だろう?どんなイメージ?どんな事?どんな時平和を感じる?と問いかけて、何人かに発表してもらいます。
「みんなが仲良しなのが平和」「幸せって感じる時が平和」「争いごとが無いことが平和」「おいしいものが食べられることが平和」「こうやってみんなが集まって絵を描けることが平和」etcと、子ども達はいろんな事を思い発表しました。
では、平和の絵・・・何を描こう?
奇麗なお花畑に、いろんな生き物がいるところ?
動物や、鳥や魚・・人間も楽しく暮らしているところ?
美味しいそうな食べ物がいっぱいの様子?
みんなみんな素敵ですね。今回は平和の種を紙いっぱいに蒔いて、平和の樹を育てよう!ということになりました。【一つに決定するのは難しいこともあります。好きなものを描いてもそれはそれでいいのかもしれませんが、指導者は目標に向かってみんなの気持ちをまとめなければなりません。ここで大切なことは、指導者もみんなと
同じレベルで考えたというように感じられる提案をすることです。先生が決めた、と絶対思わせないことです。どの課題もそうですが、指導者はある程度こういうことを体験させたいというものをしっかり持っていなければいけません。しかし、子ども達の思いを最優先にして、柔軟に対応したいと思います。子ども達のほうが素敵なアイデアを持っていることを忘れないでください、素敵だと思う提案があった時は用意していたものを変更するのがいいと思います。】
ひとり一人に紙粘土(軽量)を渡します(ミニトマト2個~3個くらいの量)、そして「幸せの種」を作ります。種ができたら、紙の上に蒔きます、そしてそこから芽が出てどんどん大きく育っていくように描きます。紙の上下はありません、どこに種を蒔いても大丈夫、種を蒔いた所から描き始めます。墨汁で、一気に描いていきます。子ども達は自分の種から、どんな樹を育てようかと真剣に考えていました。それぞれの思いを持って本当に全部ちがった個性あふれる樹がどんどん紙の上で育っていくのは素晴らしい光景でした。休憩時間も惜しんで夢中で描いていました。
「自分より大きい樹を描けて楽しい」「大好きなベルばらの花をいっぱい描きたい」「音楽が世界に鳴り響いて幸せな気持ちになれるように音が響いているように描きたい」と・・・・
1日目、2日目は墨汁で描く事が中心としました。
3日目 色を加えていきます。
まず、墨で描かれた色々な樹をみんなでよく見ます。1,2日目に参加して自分で描いた樹がある子も、今回初めて参加した子もいますが、この作品は全員で描き上げるので、自分が描いた所だけを仕上げるのではないことを伝えます。また1,2日目に参加して後は来られない子もいるので、そのお友達の気持ちを想像して描き加えていいことも伝えます。
さて、「平和の色ってどんな色だろう?」と問いかけます。色の印象は本当に人それぞれなので、正解はありません。赤は、攻撃的な色、血の色と思う人もいれば、太陽のように暖かい色と思う人もいるはずです。ですから、その子の「平和の色」でいいのです。
絵具は、水彩絵の具を使います。そして使う色は3原色(赤・青・黄)と白だけにします。理由は樹とか、葉を描くとなると茶色、緑を使ってしまいます。チューブにある既成の茶色、緑ではみんな同じ色になりがちです。それを避けるためにも、3原色で自分の色を作ってもらうためです。以前のワークショップ「自分だけの色を作ろう」で混色を経験している子も、初めて経験する子もいますが、色を混ぜることはとても子ども達には楽しい作業のようです。「いろんな緑ができたよ!」と色づくりに夢中になる子もいました。
4日目
もっともっと描きたいけれど、今回は4日間のワークショップで仕上げなければなりません。(学校の授業なら、私は時数を予定より 増やすこともします)最終日、どのように纏めるか正直不安でした。仕上がるだろうか?
そんな、私の不安をよそに子どもたちは自由に好きな色を使って楽しく描いていました。そこで、一度作業を止めました。一度離れて全体を見せようと思ったからです。紙から離れて、後どこがまだ描き足らないか?そして今日絶対仕上げるには、どうしたらよいかなどを話しました。そして、空いているところに一人ひとり、幸せの鳥と、ウクライナの平和のヒマワリを必ず描こうと決めました。最後に、もう一度世界が平和になるように心を込めて描きました。みんなとても満足した様でした。はじめの参加予定より日数を増やして参加してくれた子も何人もいて、本当に子ども達が楽しんでこの課題に取り組んでくれたことを嬉しく思いました。
また、松本市美術館に展示できたことは、始めるときは思ってもいなかった事で、本当にご尽力いただいた沢山の方に感謝申し上げます。